June 24, 2008

「仏教の思想」と昨今の「仏教ブーム」

ちまたでは、「仏教ブーム」といわれる現象がしばらく前から起こっているようで、様々な仏教関連の本が出版され、人気を博しているとか。僕は、知識や学問として仏教をとらえるつもりは無いので、これらの本はほとんど読んでいないのですが。。

仏教の教えは本来、実践を通して初めて理解できるものなので、学術的な対象として捉えても、理解すべきことは分からないものなのです。もちろん「仏教とは何か?」は分かるでしょうけど。


釈迦が説いた原始的な仏教(上座部仏教・原始仏教などと呼ばれる)には、信仰の対象となる「神」が存在しません。釈迦が伝えようとしていることは、確かめようのない対象を心から排除し、疑う余地のない真理だけをひたすら観察し続け、そこから悟りを導きだすための「心のトレーニング法」と考えていいと思います。だから、いわゆる「宗教」と呼べるものではないのかもしれないですね。

仏教は、インドから大陸を横断し、日本にたどり着いた頃には随分変わっていたようで、日本の仏教は大乗仏教という、少々宗教的要素の強いものに変化したようですが、根本的な思想はあまり変わらないはずです。ここ数年、僕が常に実践しているのは上座部仏教の瞑想法(ヴィパッサナー瞑想)なのですが、これもおそらく日本の「禅」と本質的にはあまり変わらないのではないでしょうか。


さて、人は物事を「判断」します。しかも、多くの場合は自分の都合の良いように判断します。「判断」によって得られた答えは、その結果がどれだけ多数派であろうと少数派であろうと、「意見」や「論」でしかありません。ある時代に圧倒的な支持を得た思想が、時代の変化とともに支持されなくなることもあります。ある国では常識的な行為でも、他の国では非常識ということもあります。戦時下では、法によって殺人が正当化されることもあります。「人の考えた事」とは、そういう性質のものです。

人は「自我」があると思いたがります。でも、体の細胞は代謝によって常に入れ替わっています。細胞以前に分子レベルでも常に入れ替わっていることも分かっています(福岡伸一さんの「生物と無生物のあいだ」はおすすめ!)。これは、実体としての自分など、どこにも存在していないということです。「輪廻転生」という仏教用語がありますが、これは元々「前世から生まれ変わる」ということではなく、地球上のあらゆる物質やエネルギーと入れ替わりながら、時の流れの中で、その瞬間毎に違う存在として自分がある、ということを示した言葉でしょう。また、エネルギーと物質が本質的に同じものであることも、アインシュタインによって証明されています。

では、心は不変的かというと、これも時と共に変化していますよね。その時代毎のイデオロギーや生活環境、体調や天候などによって多少なりとも変化していることは自覚できることと思います。

一時間、一日、といった短い期間では気づきにくいことですが、身も心も、瞬間毎に少しずつ変わりゆくものであって、自分の存在を定義できる、確固たる裏付けなど存在しないのです。自分自身はもちろん、この世の全てのものは、川の流れのように、そこに変わらずにあるかのように見えても、実際には常に流れているわけで、それは仏教では「諸行無常」や「諸法無我」という言葉で表現されていて、物事の捉え方の大前提となっています。


そんな妄想であるはずの「自我」に執着する心によって、結果的に苦しみが生じます。「無我」であることが体得出来れば、「自分が人や全ての自然と何も違わないこと」が理解でき、「自分が他人よりも良い思いをすること」の無意味さが分かります。「自然の摂理」そのものを、ありのままに受け入れることと、「人の考えた事」の積み重ねで構築された社会的な価値観を受け入れることと、それぞれがどれだけ信じるに足るものかも理解できます。「無我」であることを理解している「自分」がそこにあれば、煩悩の根本である「貪 = 必要以上に求めること」「瞋 = 怒りの感情」「痴 = 真理に対する無知」は、いずれ自然と消え去るでしょう。

「少欲知足」= 欲を満たすことではなく、欲を少なく抑えられた自分に満足を知る。これが、仏教の基本理念です。欲を満たし続けていくことは、欲という負債を満たすために、次の負債を作り出すようなもので、際限のない資源の浪費や、苦しみのループから逃れることは出来ないわけです。あらゆる欲を抑えられたことに満足する方が、本当は楽に生きられるということを教えています。

このような仏教の思想を、社会全体が理解して受け入れれば、地球と自分自身との区別はなくなるので、人々はそれを傷つけることの意味がよく分かるはずです。仏教ブームが形骸的なものに終わらずに、社会全体の思想を変えるまでに発展すると、個人的には喜ばしいことだと思っているのですが。。

日時:2008年06月24日 03:50 | カテゴリー:独り言

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